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"20~24歳の童貞が「10年後も童貞」の確率は6割強!"の嘘を暴く

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20~24歳で童貞だと、10年後も童貞の確率が高いという衝撃的なニュースを発見したが、内容をみると、典型的な統計マジックを使っていることがわかる。このような数字だけがひとり歩きをする可能性があるので、この数字が間違っていることを記事にする(残念なことにこのブログのアクセス数は少ないため、埋もれてしまうことにありそうだ)

統計学者)鳥越規央氏「20~24歳の童貞男性が10年後、30~34歳になっても童貞のままでいる可能性は63.2%、半分以上もあるというわけです。25歳を超えると、童貞卒業は困難になってしまうのかもしれません」(引用:20~24歳の童貞が「10年後も童貞」の確率は6割強! (R25) - Yahoo!ニュース

統計学者)鳥越規央氏の主張について

まずは、統計学者である鳥越規央氏の主張である『20~24歳の童貞が「10年後も童貞」の確率は6割強』」というニュースの概要についておかしいところを突っ込んでみる。

■性経験のない未婚男性の割合
2010年
20~24歳 40.5%
25~29歳 25.1%
30~34歳 26.1%
35~39歳 27.7%

2015年
20~24歳 47.0%
25~29歳 31.7%
30~34歳 25.6%
35~39歳 26.0%

「2010年に『20~24歳』のカテゴリにいた人は、2015年には『25~29歳』のカテゴリに入ります。ここから、20~24歳だった男性が5年後もまだ童貞である確率を出しましょう」

0.317÷0.405=0.783

つまり、78.3%の確率で5年後も童貞であり続けるというわけだ。2020年以降も童貞率の数値が2015年と変動しないと仮定すると、10年後はどうだろうか。

0.256÷0.405=0.632

上記文章の指摘箇所に赤色ボールド下線付にした。一見正しいように見えるが、これは未婚者のみの数字を持ってきており、未婚者で童貞の人が、5年以内に脱☆童貞をして結婚することを一切考慮していない。どういうことかというと、例えば下記のケースだと、

  • 2010年:男性1,000人、うち既婚者300人/未婚者700人と仮定する
    →未婚者の40.5%が童貞なので、童貞人数は未婚者700人×童貞率40.5%≒284人となる。既婚者は全員非童貞と考えると、本当の童貞率(未婚者/既婚者 総数に対する童貞数)は、284人/1,000人=28.4%となる。
  • 2015年:男性1,000人、うち既婚者700人/未婚者300人と仮定する
    →未婚者の31.7%が童貞なので、童貞人数は未婚者300人×童貞率31.7%≒95人となる。既婚者は全員非童貞と考えると、本当の童貞率(未婚者/既婚者 総数に対する童貞数)は、95人/1,000人=9.5%となる。
  • 5年後童貞率は、2015年の本当の童貞率/2010年の本当の童貞率で求まるのだから、9.5%/28.4%≒33.5%となり、未婚者で童貞の人が結婚することを考慮すると、全然違う数字となる

以上のように、この統計学者(笑)の前提条件が実情を反映していない(童貞でも既婚者になったら母数から除外していること)ため、それがなぜおかしいかの理由を簡単な例で示した。

次の節では、実際の国勢調査の既婚者/未婚者の数字を使って20~24歳の童貞が5年後/10年後に童貞である確率の正しい数字を私が示したいとおもう。

20~24歳の童貞が、5年後/10年後に「童貞」である確率

20~24歳の童貞率は、2010年度の「20-24歳」の男性総人数および男性のうち未婚者数、そして童貞割合が判明すれば、そこから童貞人数および童貞率は算出可能である。そして、2010年度の「20-24歳」の層は、5年後の2015年度には「25-29歳」の層になっているため、この時の男性総人数および男性のうち未婚者数、そして童貞割合も算出した。10年後の童貞率は、2020年にならないとわからないため、ここでは2015年の童貞率および既婚者割合も同じと仮定し、2015年度の「30-34歳」の数字を使うことにした。これらを表にしたものを下記に記す。

年度 年齢 男性総数[人]:A 男性未婚者数[人]:B 性経験のない未婚男性の割合:C 童貞人数[人]:D(B×C) 性経験のない男性の割合
FY2010 20-24 3,266240 2,986,237 40.5% 1,209,426 37.0%
FY2015 25-29 3,255,717 2,222,616 31.7% 704,569 21.6%
FY2015 30-34 3,255,717
(3,684,767)
1,461,417
(1,648,679)
25.6% 374,123
(422,062)
11.5%

FY2015:30-34歳の男性総数/男性未婚者数/童貞人数の( )内の数字は実数。表中では、FY2015:30-34歳をFY2015:25-29歳の総数に合わせて未婚者数/童貞人数を算出した数字を使用。(結論である童貞率に差はでないものである)

(出典)

  • 「平成22年国勢調査結果」(総務省統計局) 「平成22年国勢調査 人口等基本集計 第5-1表」を加工して作成
  • 「平成27年国勢調査結果」(総務省統計局) 「平成27年国勢調査 人口等基本集計 第5-1表」を加工して作成
  • 「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」(国立社会保障・人口問題研究所) 2017年1月28日に利用

以上のように、2010年度に20~24歳の童貞率は37.0%で、その5年後の2015年度の童貞率は21.6%のため、20~24歳の童貞が5年後も童貞率である確率は58.4%(21.6%/37.0%)である。つまり、20歳前半の男性は5年経過しても半分以上が童貞のままということになる。

そして、2010年度に20~24歳の童貞率は37.0%で、その10年後の2020年度(ただし2015年度の割合から変化なしの前提)の童貞率は11.5%のため、20~24歳の童貞が10年後も童貞率である確率は33.5%(11.5%/37.0%)である。20歳前半の男性が童貞の場合、10年経過しても1/3程度は童貞のままということになる。

まとめ

20~24歳の童貞が「10年後も童貞」の確率は6割強というのは完全に嘘であり、正しくは3割強と半分以下であることが判明した。

このような誰にでも嘘とわかるようなデータを提示する鳥越規央氏は、さぞエセ理系なのだろう。そう思い簡単に調べてみると、理学博士を持つ統計学者であり、かつメンサ(人口上位2%の知能指数 (IQ) を有する者の交流を主たる目的とした非営利団体)の会員であるため、めちゃめちゃ知能が高いらしい。それでこのようなお粗末なものを提示したのは、センセーショナルな数字を出して情報を拡散させようという目的のためだと思われる。

私が統計学者であれば、このようなプライドが全くないようなアウトプットはとてもじゃないが出せない。つまり、鳥越規央氏は知能は高いのかもしれないが、統計学者としてのプライドがない人物だということも判明した。